2013年1月18日金曜日

『キセキ27』熊本県立美術館③ (完)


今回は熊本県立美術館(1976年竣工)の
タイルのお話です。

前川は、従来の工法の欠点である
タイルの劣化や外的付加による剥落を
解決すべく、”現場打込みタイル”を生み出します。

打込みタイルとは、
特注のタイルを型枠に留め、
コンクリートと一体化させることで、
剥落や浸水のない耐久性のある外壁を実現した工法です。


熊本県立美術館の外壁の
打込みタイル。



下の写真は、林原美術館(1963年)です。
熊本県立美術館の外壁タイルと似ていますが、
耐火レンガで作られています。

(林原美術館外壁)

林原美術館は、前川の美術館建築の原点とも言える作品です。
外壁に積まれた屑レンガの質感も
その後、多様された打込みタイルを予感させます。




熊本県立美術館の網代張床タイル

(吹き抜けホール床)

 

天神山文化プラザの網代張りタイル
                                          
(1階ピロティ床)


打ち込みタイルは、建築ごとに材質、焼き方、釉薬のかけ方、
タイルの大きさ等、試作により表情を確認しながら
作られた建築は、その後の前川建築の特徴をづける
普遍的ともいえる存在感を放っています。

建築史家・建築家 藤森照信は「(前川は)晩年のとば口に立ち、
モダニズムに冷たさを覚えるようになり、
若い日に憧れたウイリアム・モリスらが好んだ
赤レンガの暖かみに帰っていったそうです。
熊本県立美術館は、その記念碑な作品なのです」

(藤森「名建築美術館へ」『日経おとなのOFF』2011.8)より抜粋

熊本県立美術館の素晴らしさは、
人が佇み続けられる要素、
中庭や大きい窓から自然を感じられる
空間にあると思いました。
ぜひ、また違う季節に訪れてみたいと思いました。

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