2013年2月3日日曜日

『キセキ28』 前川國男の愛した音楽

書籍「弟子たちは語る」には、前川國男氏について、

抜群の記憶力であった事、雑学に強くグルメで仕立てのよいスーツ、
速くないスポーツカー、オペラ、バレエのファンであった事など
前川氏の人柄を偲ばせるエピソードの数々が紹介されていますが、
中でも音楽への造詣は深かったと記されています。

そこで今回は、『前川國男の愛した音楽』をテーマに
前川國男が聞いたであろう音楽について、
LPレコードコンサートでおなじみの
行正健志さんにお聞きしました。


バルトークレコード、
バルトーク(1890-1945ハンガリー)ヴィオラ協奏曲
演奏:W.Primrose(Va) Tibor Serly(指揮)ロンドン新交響楽団

「弟子たちは語る」の中で、弟子達の思い出の中で言及されている
前川國男が所有していたのと同じLPレコードだそうです。

バルトークレコードはベラ・バルトークの息子、
ピーター・バルトークが興したレコード会社だそうです。
ピーターは優れた録音技師でもあり
モノラルLPに名録音を多く残しているそうです。





バルトークレコード、ピーターバルトークの録音による
バルトーク 弦楽のためのディベルティメント

演奏:LukasFoss(指揮)The ZIMBLER SINFONIETTA
前川國男はバルトークの作品の中でも特に
この曲が好きだったそうです。(弟子たちは語る)より


前川國男が、バルトークレコードのビオラ協奏曲のLPを
銀座のレコード屋で注文して購入したという話が出てきます。
ピーター・バルトークの存在やバルトークレコードの事を
当時カタログを調べて、よく知っていたのでしょう。
                       (弟子たちは語る)より
1950年当時、バルトークの作品のLPは
ほとんどない時代ですから、
バルトーク好きのマニアなら当然知っており、
前川國男が所有していた
可能性はおおいにあるのではないかと行正さん。




エリック・サティ(1866-1925)/ピアノ作品集
ジャケットのイラストはピカソが描いたサティの肖像。

前川國男は近くに事務所を構えていた亀倉雄策氏と
よくサティ談義をしていたという。
「弟子たちは語る」より

今でこそサティは大変人気のある作曲家ですが、
1950年代~60年代はじめには、
まだまだ知られていなかったそうです。



前川國男は製図室をめぐり、図面に手を入れながら、
「バルトークのライヴェルライメントを聴いた事があるかい?」
などと聞き、所員を慌てさせることもあったそうです。
「余暇を十分に取り、芸術文化に親しみ、
教養を高めると共に人生を楽しむことが
建築家の精神の高揚にとって
いかに大切かということを伝えたかった」
のではないでしょうか。「弟子たちは語る」より

今でもたまに、㈱前川建築設計事務所では、
前川國男所蔵のLPやSPを、聞かれているとか…。
心温まるお話ですね。


参考資料 「弟子たちは語る」※㈱建築資料研究者発行







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